亀田隼大 / 十倉希望医学科6年生

中高生との触れ合いを通して、地域の“あかり”となれる場所に

滋賀医科大学では、地域医療に重点を置いた教育を推進しています。本学の学生も課外活動などを通じて、地域と関わる多彩な活動を展開。学生団体「あかり」は、中高生を対象とした「あかりcafé(カフェ)」をJR膳所駅(滋賀県大津市)が所在する平野学区で開催しています。
この取組は、環びわ湖大学・地域コンソーシアムの「大学地域連携課題解決支援事業2025」に採択されています。
(※)「大学地域連携課題解決支援事業」とは
地域社会の発展と魅力ある大学づくりを目指して活動する「一般社団法人 環びわ湖大学・地域コンソーシアム」が展開する地域連携事業のひとつで、滋賀県内に立地する大学の学生による地域課題の解決に貢献する取組への活動支援事業です。

あかりcafé キービジュアル

思いを共有、新たなチャレンジへ

亀田

私はもともと医療福祉や心のケアに関心があり、本学の「メンタルヘルス研究会HAMMOCK」の部長を務めていました。活動の一環として、本学医学部附属病院精神科の増田史(ますだふみ)先生に講義をしていただいた時、いじめや虐待を受けた子どもの現状を知りました。また、学校にしんどさを感じている子どもが一定数いるという実情もあり、これらの課題にチャレンジしたいという気持ちが高まりました。

十倉

私はメンタルヘルスや地域での活動に興味を持っており、増田先生の講義を受講して、亀田さんのように自分たちに何かできないかと考えるようになりました。そこで、亀田さんをはじめとする同じ思いを持つ友人たちと、2024年2月に「学生団体あかり」を結成し、現在、約20人のメンバーが所属しています。

誰かにとっての“あかり”となれるように

亀田

「あかり」という名称は、『星の王子さま』の「点灯夫の星」というお話に由来しています。そのお話の中に、ある星に明かりをつけたり消したりする住人がいて、それは誰かのためになるとても素敵な仕事という一節があるんです。私たちの活動も、誰かにとっての“あかり”となれるようにという思いを込めて名付けました。

団体結成から半年間は、活動内容や医学生がその活動をする意味などについて話し合いを重ねました。その話し合いを経て、私たちと年齢の近い中高生を対象とすることで、より気持ちに寄り添えるのではないか、それこそが私たちが取り組む意義ではないかと考えました。そして、気軽に立ち寄れるコミュニケーションの場として、考案したのが「あかりcafé」です。

特別なことではなく、日々の生活の中で

十倉

誰でもストレスを感じたり、悩んだりすることって、毎日たくさんあると思うんです。でも、家族や友人に話せなかったり、しんどい気持ちを抱えながら元気そうに振る舞ったり、自分の中で抱え込んでしまう人が多いんです。メンタルヘルスというと、特別なことと思われがちですが、私たちは「日々の生活の中で心を穏やかに保つため、その方法を見つけ、身につけていくこと」と考えています。そのために、家でも学校でもないちょっと息抜きができる場所、家族でも友人でもない自分の話しに耳を傾けてくれる存在、そんな第三の選択肢となることが、あかりcaféに取り組む原点になっています。

地域の協力やつながりにサポートされて

十倉

地域での活動が始めてだったので、フリースクールの方や民生委員さんなど、さまざまな立場の方にインタビューし、どの地域にどんな場所が必要とされているのかをリサーチしました。自分たちのしたいことを具体化して、それを地域の方が必要とする形で実現につなげるプロセスを検討することが、最も大変でした。

亀田

その過程で、滋賀の子どもの居場所について情報発信されている団体の方と出会いました。膳所駅周辺には子どもが多いにも関わらず、居場所が少ないとの課題をいただき、膳所駅が所在する平野学区で子どもたちの居場所になるような場所を作ることができたらなと思いました。増田先生や本学医学部小児科学講座の阪上由子(さかうえゆうこ)先生のお力添えに加え、地域のみなさんにご協力いただき、2025年3月に第1回目の「あかりcafé」を開催しました。その後も公民館やコミュニティセンターなどをお借りして、今ではほぼ毎月1回開催しています。

より幅広く、楽しくアップデート

十倉

あかりcaféは、好きな時間に来て、いつ帰ってもOK。おしゃべりはもちろん、ボードゲームで遊んだり、本を読んだり、過ごし方も自由です。その反面、どんなことをしているのか、来店したものの何をしようか、わかりにくいともいえます。あかりcaféでできることの幅を広げたり、もっと明確にしたりして、来店の動機になるようなアイデアを検討しています。

亀田

今では来店時に、まずあかりcaféでどう過ごしたいかを確認したうえで、その人が望むことを気兼ねなくできるような関わり方を心がけています。また、自分たちが楽しくないと中高生も楽しめないという気づきもあり、ただ場所を提供するだけでなく、私たち自身も含め、みんなで楽しみながら作り上げていっています。現在、空き家を改装し、「若者のやりたいことを実践できる空間」を作る計画が進行中です。みんなで一緒に考え、ともに作り、お互いにとって魅力的な場所にアップデートしていきたいです。

経験や学びを、これからの力に

亀田

活動を進め、中高生と関わる中で、私は無意識的に支援・情報提供するというスタンスでいたことに気づかされました。彼ら、彼女らは自分の考えを持った自立した大人です。私自身の思い込みに気づいたことで、みんなで一緒に楽しもうという考え方に転換することができました。現場でのコミュニケーションから得た学びは、これから医療従事者を目指す私にとって大きな力になっていくと感じています。

十倉

自分たちがやりたいこと、できることを一方的に発信するだけでは、必要とする人に届くとは限らないので、私たちから必要としている人と向き合い、積極的に教えてほしいと呼びかける姿勢がとても大切だと思いました。将来は、気軽に相談できる身近な医師として、誰もがハッピーに、心穏やかな日々を過ごせるようなまちづくりに貢献していきたいです。

2026.1.14

Interviewee

亀田隼大 / 十倉希望

(医学科6年生)

Photographer

秋月 武

Writer

井上 麻理子