宮口 凜医学科5年生

憧れや関心から始まった研究への挑戦-レストレスレッグス症候群と抑うつ状態との関連性を解明-

「レストレスレッグス症候群(RLS)」(以下、RLS)は「むずむず脚症候群」とも呼ばれ、主に下肢の不快感と、動かしたくなる衝動を特徴とする疾患です。小児から高齢者まで幅広い年齢層にみられ、睡眠が阻害される苦痛があることから精神面への影響が注目されていました。本学医学部医学科の学生と教員による研究グループが、RLS患者における抑うつ状態の合併率を、世界で初めて明らかにしました。

約4,000件の医学論文をスクリーニング

今回の研究は、精神医学講座の増田史先生や角幸頼先生らによる研究グループに私も参加させていただく形で、2022年から開始しました。先生方と話し合った結果、身近な病気でありながら解明されていない点が多いRLSを研究テーマとして設定し、「システマティックレビューとメタアナリシス」という手法で研究を行うことになりました。システマティックレビューとは、既存の研究成果を網羅的に収集し統合・評価する手法です。そしてメタアナリシスとは、複数の研究結果を統合して全体の結論を導き出す統計的手法です。これらにより、個々の研究成果を集約し、より信頼性の高い結論を導き出すことができます。
まず、世界各国から収集した約4,000件に及ぶ医学論文を、信頼性や有用性などをチェックしながらふるいにかける、スクリーニングから研究をスタートしました。

RLS患者の約30%が抑うつ状態を合併

スクリーニングによって、最終的に絞り込んだ論文は24件でした。これらを評価・分析した結果、RLS患者の30.4%がうつ病を含む抑うつ状態を合併しているということを、世界で初めて明らかにしました。
この研究成果は、今後のRLSの治療にも影響を与えていくと考えられます。

研究成果を学会や報道機関に発表、嬉しい反響も

研究グループの先生方から、今回の研究成果について、日本睡眠学会で発表する機会をいただきました。偶然にも、2024年7月18日の学会発表当日に、今回の研究成果をまとめた論文が、睡眠医学に関する国際ジャーナルに掲載されました。論文が掲載された喜びはもちろんのこと、お世話になった研究グループの先生方と一緒に喜びを分かち合えたことが何より嬉しかったです。
その後、学内で開催されたオンライン記者説明会にも参加させていただいたのですが、説明会から数日経ったある日、祖母から突然「新聞に名前が載っているよ」と電話があり、その嬉しそうな声に、今回の研究成果への反響を実感しました。

 

先生方のサポートが原動力に

研究を進めていく中で苦労した点は、国や言語の異なる約4,000件の論文をスクリーニングする工程でした。膨大な数と作業量を、増田先生と角先生と私の3人で分担し、週に1回のミーティングでは、自身が抱えている課題や疑問を先生方に投げかけ、その都度フィードバックをいただきました。先生方の手厚いサポートのおかげで、モチベーションを高めながら研究を進めることができたと感じています。
また、学会発表の前には先生方が何度もリハーサルをしてくださったおかげで、当日は落ち着いた気持ちで登壇できました。発表後、先生方からは「自信を持って発表できていたよ」とお褒めの言葉をいただき、まるで自分のことのように喜んでくださったことがとても印象に残っています。

 

成長へと導いてくれた出会いに感謝して

私は、本学に入学したときから精神医学の分野に関心があり、自身で研究をすることにも憧れていました。研究に対する漠然とした憧れが実際の行動に結びついたきっかけは、本学の『地域「里親」学生支援事業』に参加したことです。滋賀県内で医師等として活躍している先輩が、自身の「里親」となり様々なサポートをしてくれるという本事業の内容に魅力を感じて応募をしたところ、里親としてご紹介いただいたのが、今回の研究を含め入学当初からサポートしてくださった増田先生でした。増田先生と角先生との出会いが、今回の研究グループへの参加に繋がり、学部学生でありながら、多くの貴重な経験を積むことができました。また、角先生は現在海外で研究をされており、自身も将来的に海外で研究することに憧れを抱くようになりました。
今回の経験から、自分の思いや考えを発信することの大切さを改めて認識し、実際に挑戦して目標を達成できたことで、自身の挑戦の意欲も高まったように感じます。
自らの成長や可能性を引き出してくれた先生方との出会いに、心から感謝しています。

 

 

 

 

 

 

 

2025.3.28

Interviewee

宮口 凜

(医学科5年生)

Photographer

山崎 純敬

Writer

井上 麻理子