加藤 幸太郎医学科2年生

知識を広げて、未来をつくる-つなげる、つながる「救急医療の輪」-

本学では、多くの課外活動団体が、学内外で様々な活動を行っています。課外活動団体には、文化会・体育会・同好会の三種類があり、文化会には、芸術系や医学系、ボランティア活動など幅広い分野のクラブやサークルなどが所属しています。その中のひとつである「救急医療研究サークル SALSA(Shiga Advanced Life Support Associations)」は、地域や他大学と連携しながら、多彩な活動に取り組んでいます。

救急医療に対する“熱さ”に圧倒されて

救急医療研究サークルSALSA(サルサ)(以下、SALSA)は、心肺蘇生法を中心とした一次救命処置の習得をはじめ、救急医療の知識や技術を医学生・看護学生はもちろん高校生や一般市民に普及する活動に取り組むサークルです。他大学にある救急系の部活やサークルなどと連携し、全国的なイベントやワークショップなどにも参加しています。
私が入部して初めて参加したのは、心肺蘇生法の技術を競う選手権大会でした。会場の活気に圧倒され、参加者の救急医療に対する熱い思いを体感したことがとても印象に残っています。胸骨圧迫の部門で私が一位を獲得したこともあり、このイベントをきっかけにSALSAの活動に積極的に参加し、やりがいや楽しさを感じるようになっていきました。

高校での心肺蘇生講習会開催にチャレンジ

SALSAの部員は約100人で、ほとんどのメンバーが他の部活と兼部しています。活動への参加は本人の自由ですが、メンバーの提案やチャレンジをみんなで応援しようとする気風があります。2024年11月には、本学の看護学科の先生から声をかけていただいたことをきっかけに、滋賀県立東大津高等学校(以下、東大津高校)の授業で、SALSAとしては初めて高校生向けの心肺蘇生講習会を開催しました。

講習会は、同校の1年生360人を対象に数日かけて開催。演習パートでは「実際に起こりうる状況下」で心肺蘇生法をトレーニングしてほしいという思いから、「救急車が到着するまでの9分間」を想定したシナリオを用意しました。そのシナリオのもと、1グループあたり4人の同校生徒に対して、本学学生1〜2人がインストラクターとなり、胸骨圧迫やAEDの使い方についてサポートを行いました。
これら一連の準備から講習の構成・シナリオ作成までをメインで担当させていただいたことはとても貴重な経験になりましたし、インストラクター役としてSALSAのメンバー以外の学生がたくさん協力してくれたことも、今後活動を行う上での励みになりました。

 

地域の方々との関わりから感じた手応えと課題

東大津高校での講習会で心掛けたのは、興味のない高校生も含めた全生徒の「やってみよう」という気持ちを引き出し、そのモチベーションを継続させることでした。受講後の感想では、9分間という時間に言及して「1人では大変」「みんなの協力が必要」といった意見が多く見られ、今回の講習会に対して真剣に取り組んでもらえたことを実感できました。こちらが伝えたかったことがしっかりと伝わっていて、とても嬉しく感じました。

 

 

一方で、地域の方々を対象とした活動では、意外な発見があったり、新たな課題に直面したりすることもありました。
滋賀県が主催するイベントに心肺蘇生法の体験コーナーを出展した際、訓練用マネキンを見て「怖い!」と言って逃げていく大人の方が多くいらっしゃり、自身との意識のギャップに大変驚きました。「怖い」という心理的な抵抗感から、いざというときにどう行動するべきか体験する機会を避けている方がいらっしゃることを目の当たりにし、そのような方々にそういった体験の重要性を伝えることの難しさを痛感しました。体験に対するハードルを少しでも低くすることは、今後の活動においてクリアしていくべき重要な課題だと考えています。

 

いざ目の前で人が倒れたときに、誰もが“手助けしよう”と動けるような土台作りを

SALSAでの活動を通して、様々なつながりを実感しています。
例えば、他大学の救急サークルの方が発案したアイデアを、私がアレンジし、実際にそれを私たちの心肺蘇生講習会で活用しています。最近も、他大学の救急サークルの代表から、「どのようにアレンジをしたのか教えてほしい」と連絡をいただいたことがありました。救急サークル間の繋がりが増え、よりよい講習会を開くことができていると感じています。そのほかにも、私たちが実施した東大津高校での講習会をきっかけに、他の高校でも講習会の開催を計画しているという話もあります。
このように、一つひとつの取り組みが伝播し、どんどん輪が広がって、救急医療の知識や技術を身に付けた人が少しでも増えてほしいと思っています。そして皆が、いざ目の前で人が倒れたとき、「自分にも何かできることはある!」と自信をもって倒れている人に駆け寄っていける…SALSAでの活動が、そんな土台づくりに貢献できれば素晴らしいことだと思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

2025.3.28

Interviewee

加藤 幸太郎

(医学科2年生)

Photographer

山崎 純敬

Writer

井上 麻理子