西田 日和 /蜂須賀 ゆな看護学科1年生

地域の人々との交流を通じ、地域医療に携わる魅力・やりがいを実感する地域理解・交流事業「宿泊研修」

本学の「学生生活支援部門 里親学生支援室」では、地域理解・交流事業として年2回の「宿泊研修」をNPO法人滋賀医療人育成協力機構と協同で実施。学生が県内各地を訪問し、文化や歴史に触れながら、地域医療への関心を高め、理解を深める取り組みを行っています。 2023年第1回目となる宿泊研修は、8月24日に滋賀県のほぼ中央に位置する近江八幡市・沖島方面で行われました。

地域医療の視点で地元を見つめる

西田
私は生まれも育ちも草津で、滋賀が大好きです。

卒業後も滋賀での就職を希望しているため、地元の地域医療の現状を知ることができる宿泊研修に興味を持ちました。

そこで、高校時代から友人の蜂須賀さんに声をかけ、研修に参加しました。
蜂須賀
西田さんから宿泊研修のことを聞き、地域の医療施設を見学したり、医療従事者の方々と交流できたりすることに魅力を感じました。

今まで行ったことのある市町を、地域医療という視点から見つめ直すという体験も新鮮でした。

西田さん

 

公民館の一角が、唯一の診療所

西田
今回の研修はコロナ禍の影響もあって、日帰りで行われました。

当日はまず、船で沖島に渡って公民館の一角にある沖島診療所を訪問。 この診療所は1週間に1日のみ開所していて、5人の先生方が当番制で診察を行っておられます。

印象的だったのは、診察するスペースが狭いため、患者さんのプライバシーを守るのが困難なこと。

近年は個人情報保護への対応が進み、環境も整ってきていますが、それが地域によっては当たり前ではないことに驚きました。
蜂須賀
離島のため大きな手術は困難で、救急の場合はレスキュー隊を要請し、船で近江八幡の病院に搬送するとのことでした。

診療所の広さだけではなく、医療の資源や人手も限られている中で、島民の健康を支えるための医療従事者の工夫や課題などを実感できました。

蜂須賀さん

 

島の暮らしに触れる

蜂須賀
沖島での研修後には、昼食と散策の時間もありました。 沖島は琵琶湖最大の島で、日本で唯一、淡水湖に浮かぶ、人が暮らしている島です。 2人とも上陸したのは初めてで、古い家が並ぶ入り組んだ路地などを歩いていると、まるでタイムスリップしたようでした。
西田
お昼ごはんには、島のお母さんが作ってくれたお弁当をいただきました。 琵琶湖の魚や地元の食材がふんだんに使ってあって、とてもおいしかったです。 医療の現場だけではなく、島の環境や島に住むみなさんの暮らしの一端に触れたことで、地域と医療のつながりがより身近に感じられました。

 

 

退院後の生活も見据えたケア

蜂須賀
午後は、東近江保健医療圏にあるヴォーリズ記念病院を訪問。

緩和ケア病棟があるため、高齢者や終末期医療の患者さんが多くいらっしゃいました。リハビリテーション病棟では、退院後も一人で入浴できるよう、自宅に合わせて手すりの位置などをアレンジされていました。

できないことばかりに目を向けるのではなく、その人ができることに目を向け、できるようにサポートすることが大切だと感じました。

その一方、自動車の運転シミュレーターを取り入れて、自分の運転能力を客観的に判断するメニューもありました。

これは、退院後の事故予防につながるもので、患者さん自らが「できない」と認識することも、退院後の生活を見据えたリハビリの一環であると初めて知りました。

 

 

“死”も「その人らしさ」を大切に

西田
ヴォーリズ記念病院にはチャペルがあり、チャプレンの先生からお話を聞きました。

礼拝室には、故人の好きな音楽のカセットテープなどが置いてありました。

死に対して暗いイメージを持っていましたが、印象的だったのが「死は入り口」で、死んでも生き続けるという言葉でした。

病室も患者さんが自分の部屋に近い状態で過ごせるように配慮されており、入院中も死も「その人らしさ」を大切に、一人ひとりの患者さんや遺族の方に寄り添っておられる姿が心に残りました。

 

 

新たな課題と広がる選択肢

西田
今回の研修を通じて、私は地域医療に興味を持つようになり、在宅医療や訪問看護の道も、これからの選択肢に加わりました。

沖島を散策している時、狭くて段差のある道を、歩行器を押しながら移動する高齢の方を多く見かけました。

また、ヴォーリズ記念病院では、最後は自宅で迎えたいという声も聞きました。

滋賀の中でも移動手段や医療機関の限られた地域で、患者さん自身のご自宅という一番安心する場所で過ごせるお手伝いができればと思っています。
蜂須賀
私はもともと小児科の看護師が希望でしたが、研修では高齢の方の看護のお話もたくさん聞くことができ、今後に生かせる経験ができたと実感しています。

今回の研修を通して、子どもだけではなく、幅広い年代の方とも相互に理解できるような喋り方や接し方、情報の伝え方なども勉強していきたいと思いました。

 

 

研修を終えて

西田
研修に参加した26名には、滋賀医科大学以外の学生もおり、年齢層も幅広く、私たちが最年少の参加者でした。

感想や質問などの観点もそれぞれ視点が異なり、他大学の取り組みで意欲的に学ぶ姿を見て、「私たちも頑張らないと!」と刺激を受けました。
蜂須賀
今後は都市部の大規模な病院や、急性期の医療などの現場も訪問してみたいです。

宿泊研修では地元の方と交流する時間が予定の中に組み込まれているので、今度は医療を提供する立場の方のお話だけではなく、提供される一般の方にももっとお話を聞きたいですね。
西田/蜂須賀
短い間でしたが、たくさんの学びと楽しみもある充実した時間でした。

次回もぜひ、参加したいです!

 

西田さん

 

蜂須賀さん

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2024.3.1

Interviewee

西田 日和 /蜂須賀 ゆな

地域理解・交流事業 里親「宿泊研修」参加者(看護学科1年生)

Photographer

山崎 純敬

Writer

井上 麻理子