大坪琉奈 / 江南匡駿医学科5年生 / 医学科2年生

医療をより身近に感じる場、地域と学生をつなぐ「じぶんごとCafé」

滋賀医科大学では、地域医療に重点を置いた教育を推進しています。本学の学生も課外活動などを通じて、地域との交流を深める多彩な活動を推進。そのひとつが、医療をより身近に感じてもらうための場所「じぶんごとCafé(カフェ)」です。
この取組は、環びわ湖大学・地域コンソーシアムの「大学地域連携課題解決支援事業2025」に採択されています。
(※)「大学地域連携課題解決支援事業」とは
地域社会の発展と魅力ある大学づくりを目指して活動する「一般社団法人 環びわ湖大学・地域コンソーシアム」は、多種多様な地域連携事業を展開しています。「大学地域連携課題解決支援事業」では、滋賀県内に立地する大学の学生による地域課題の解決に貢献する取組を採択し、活動支援を行っています。

じぶんごとCafé キービジュアル

「じぶんごと」として医療をより身近に

大坪

「じぶんごとcafé」の取り組みは、本学の国際保健・地域医療研究会「TukTuk(トゥクトゥク)」と、若者にHPV(子宮頸がん)ワクチンについて広く発信する医学生団体「Vcan(ブイキャン)」の有志メンバーが協同して、2023年からスタートしました。カフェの名称には、さまざまな医療の課題を“ひとごと”ではなく“じぶんごと”化して捉えてほしいという思いを込めています。

江南

2023年10月と2024年4月には、「HPV ワクチンについて理解を深めよう」をテーマに、石山と彦根の平和堂でじぶんごとcaféを開催しました。私自身は当時高校生から大学入学直後の時期でしたので、運営には携わっていませんでしたが、当日はお茶やお菓子を楽しんでいただきながら、HPVワクチンの説明をはじめ、心臓マッサージの体験や、医学科・看護学科の受験に悩む方への、現役学生による進路相談などを行いました。

地域のみなさんと学生の交流する場所を

大坪

当時私はVcanの代表をしていました。Vcanの活動の主な対象は出前授業を通した高校生や大学生ですが、より幅広い年代の方々が自分の健康を守る情報に出会い、気軽に相談できる場所を作りたいと思ったのが、「じぶんごとcafé」を考案したきっかけでした。

また、私たち医学生は、これから地域医療を担う立場になっていきます。ですが、実習以外で医療の受け手である地域のみなさんと接する機会は限られています。地域のみなさんと学生との交流は、地域のみなさんが医療に何を求めているのかを肌で感じ、自身の目指す将来像を明確にしていくことにもつながると考えています。

学生だからこそ、できることを

江南

私はTukTukのメンバーとして以前から大坪さんと面識があり、面白そうなことを始められると聞いてじぶんごとcaféの活動に参加しました。

じぶんごとcaféの目標のひとつが、医療をより身近に感じてもらうことです。一般の方の中には、病院に行くと緊張してしまったり、医師と思うように話せなかったりという方もおられます。その人が暮らしている生活圏で医療を学ぶ若者たちと触れ合うことによって、心理的なハードルの高さを、少しでも下げることができればと考えています。地域の方と立場が近く、気軽に話しやすい私たち学生だからこそ、挑戦する意義があると思っています。

楽しみながら、きっかけづくり

大坪

過去2回の会場はショッピングセンターだったので、買い物途中の方がふらっと立ち寄りやすいよう工夫しました。小さいお子さまを連れた方でも参加できるよう、ビンゴゲームをしたり、人体模型の展示や楽器演奏の体験をしたりするなど、大人が話している間に、子どもが楽しめるようなイベントにしました。興味を引くさまざまな要素に医療の情報も織り交ぜて、「これって私のことかも」と思ってもらえるきっかけになればと思っています。

江南

高校生やファミリーを中心に、老若男女問わず50人から60人の方に来店いただきました。私たち自身もさまざまな人に出会えるのがうれしくて、「みんなで一緒に楽しみましょう!」という気持ちで取り組んでいます。

病院、地域、人をつなぐ

大坪

直近のじぶんごとcaféは、学生団体「びわふぇす」が主催する病院内でのイベント「病院祭」にて開催しました。びわふぇすは医療や病院がもっと身近な存在になるよう活動しており、病院内でのじぶんごとcaféの開催は新たな挑戦でした。総来場者数約250名で、小さいお子さまからご高齢の方まで、たくさんの方に「じぶんごと」を体感してもらえたと思います。このイベントでは、江南さんに初めてリーダーを務めていただきました!

江南

今までじぶんごとcaféでは、HPVワクチンの啓発をメインに開催してきましたが、それ以外のテーマについてもじぶんごとcaféで行いたいと考え、今回はがん教育をテーマに開催することとしました。学生団体や周辺の医療系大学の学生や、高校生などにも参画いただいて、地域全体でイベントを作れるような設計にしました。医療や社会の課題に問題意識を持って活動している団体は数多くあり、私たちの取り組みが団体の発表や交流の機会になればと思い、今回は2団体と一緒に企画を考えました。

誘致した団体と地域の方そして医学生がそれぞれ交流するところを見て、人と人とのつながりを新たに作れた気がして良かったです。この出会いが、地域の方の健康への意識やセルフケアに良い影響を与えてくれると嬉しいです。また、この機会で団体、医学生の方々にも新しいインスピレーションが浮かんでいるのではないかと思います。先輩の大坪さんをお手本に、病院や地域、人のつなぎ役になっていきたいと改めて実感しました。

地域が学びの場、みなさんが先生

大坪

娘さんのHPVワクチンの接種について悩まれていたお母さまがじぶんごとcaféに来られ、「今日は来て良かった、娘とも話します」と言ってくださったことがあるんです。一つの選択につなげられたことの喜びと同時に、対面で相手と目線を合わせ、ちゃんと話したことで伝わったのだと学びました。

江南

自分が医師になった時、患者さんの病気だけではなく、その人自身と向き合い、地域の一員という視点を持ち続けながら、人としても関われる医師を志したいと思っています。今の活動は自分の思いと通じるものがあり、得た経験や学びを大切にしながら医師を目指していきたいです。

大坪

カフェに来られる方々は、私たちにとって地域の大先輩です。ここで何が必要か、医療に何が求められているのか、教えてくれる先生でもあります。そんなみなさんと医療従事者が、一緒になって地域医療を作っていくことが理想だと思います。将来は医師として、安心して暮らせるコミュニティづくりの一端を担える存在になるのが目標です。

2026.1.14

Interviewee

大坪琉奈 / 江南匡駿

大坪琉奈(医学科5年生) 江南匡駿(医学科2年生)

Photographer

秋月 武

Writer

井上 麻理子